まさに“スーパーサイズ”! ロンドンのオリンピック・パークに6月25日、世界最大のマクドナルドが完成した。オリンピック・スタジアムから300メートルのところにあり、2階建てで座席数は1500席。ピーク時には1時間あたり1200人が利用すると見積もられており、オリンピック開幕からパラリンピックの閉幕まで、およそ5万食のビッグマック、18万食のフライドポテトが提供されるという。
もっとも、このギネス級の支店はオリンピックとパラリンピックが開催されている6週間限定。ゲームが終われば解体され、その4分の3は、他のマクドナルドの支店などにリサイクルされる。
マクドナルドはロンドン五輪の主要スポンサーのひとつで、LOCOG(ロンドン五輪組織委)が唯一認めている“公式レストラン”。ところが、このファストフード界の巨人に対して、英国の医師グループが真っ向から異議を唱えている。「肥満問題に直面している英国に誤ったメッセージを送る可能性がある」というのだ。
マクドナルドのほか、LOCOGが認めた唯一のノン・アルコール飲料はコカ・コーラで、公式ビールはハイネケンとなっている。
だが、王立医科大学のスポークスマン、テレンス・スティーブンソン氏は「最高の運動競技が競われるイベントが、肥満問題と不健康な習慣にくみする企業によってスポンサードされるのは非常に悲しいことだ」と話す。医師グループは英政府に対して、五輪期間中、マクドナルド、コカ・コーラ、およびハイネケンの広告を規制するように求めている。しかし、英政府がこうした要求を受け入れるとは考えにくい。主催者側はマクドナルドなどのスポンサーを純粋なビジネスととらえており、膨大な資金をもたらす存在として歓迎しているからだ。マクドナルドなどの巨大スポンサーがなければ、ロンドン五輪自体が成り立たないことは、すでに組織委も明言している。
一方で、専門家は英国人の4人に1人が肥満であるとし、2030年までには半分にまで増大すると予測している。肥満とそれに関する疾患の医療費は年間、4億ポンド(約500億円)にも達する。
「これらのブランドは、選手の健康さやしなやかさと関連づけるためにオリンピックを利用しているんです。その製品について考えるとき、彼らは私たちに、肥満や不健康な人々を連想されたくないのでしょう」とスティーブンソン氏は話す。
また、英国は増加するアルコール問題を抱えており、専門家は五輪期間中にそれが悪化する恐れがあると警告している。王立医科大の特別顧問、イアン・ギルモア卿は「大きなスポーツイベントがアルコール会社のスポンサーを持つ場合、『アルコールなしではイベントが成り立たないのだ』という誤ったメッセージを若い人々に与えることになりかねない。ロンドン五輪が公式ビールを任命したことはとても遺憾なことだ」と話す。
さらに、一部の専門家は五輪期間中の広告により、普段はファストフードを食べないような人々にも消費を引き起こさせることになると指摘する。ロンドン大学の心理学、脳科学のニリー・ラヴィー教授は「われわれに広告の製作を禁じることはできないが、それらは潜在的な意識に働きかけて将来の行動に影響を及ぼす可能性がある」と指摘する。
スティーブンソン氏をはじめとする医師グループは、実際に選手たちが会場のどこでも手に入るチーズバーガーやフライドポテト、チキン・ナゲットなどに食欲を持つかは大いに疑問とし、「メダルを競う前に、一体どれくらいの選手がこれらの食べ物を口にするのか?」と疑問を投げかけている。
こうした批判に対して英マクドナルドの最高責任者(CEO)ジル・マクドナルド氏は「われわれはチキンのグリルからサラダまで幅広い選択肢を提供しているし、メニューにはカロリー情報も載せている」と反論。既存店にはなかった「フルーツ・スムージー」という新メニューも提供する。1976年以来、オリンピックの公式スポンサーとなっているマクドナルドは、オリンピック・パークを訪れる10人に1人がマクドナルドを利用すると見積もっており、五輪期間中、“高品質の英国料理”を提供するための専門知識を駆使することになるとしているが…。(五輪取材班)
ログインしてコメント 新規登録 here.